熱交換器の化学洗浄(薬品洗浄)|循環・浸漬・スプレー洗浄と薬剤の選び方
熱交換器を長期間使用していると、内部の伝熱面やチューブにスケール、錆、スラッジ、油分などが付着し、徐々に熱交換効率が低下することがあります。汚れの種類や付着状態によっては、高圧水などによる物理的な洗浄だけでは十分に除去できないケースもあります。
こうした場合に用いられるのが、酸・アルカリ・専用薬剤などを使用する「化学洗浄(薬品洗浄)」です。
本記事では、熱交換器の化学洗浄の仕組みや、酸洗い・高圧洗浄との違い、代表的な施工方法、薬品選定のポイントについて解説します。
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熱交換器の化学洗浄(薬品洗浄)とは
化学洗浄とは、汚れを物理的に削り取ったり、水圧によって剥がしたりするのではなく、薬品との化学反応によって汚れを溶解・除去する洗浄方法です。
熱交換器では、使用する流体や水質、運転条件などによって、伝熱面やチューブ内部にスケールや錆、スラッジ、油分などが付着します。これらが固着すると、表面を水で洗浄するだけでは十分に除去できない場合があります。
化学洗浄では、こうした汚れの性質に合わせて酸性やアルカリ性などの薬剤を選定し、汚れを化学的に反応させて除去します。
特に熱交換器は、細いチューブや狭い流路、複雑な内部形状を持つものが多く、ブラシや高圧水を直接当てることが難しい場所があります。化学洗浄であれば、薬液が流れる範囲全体に作用させることができるため、内部まで均一に洗浄しやすい点が特徴です。
熱交換器に化学洗浄が必要になる理由
熱交換器は、金属製の伝熱面を介して異なる流体の熱を移動させる設備です。そのため、伝熱面に汚れが付着すると、熱の移動そのものを妨げる原因になります。
本来であれば流体から金属面へ直接熱が伝わりますが、プレートやチューブ表面にスケールが形成されると、そのスケール層を介して熱を伝えることになります。スケールや錆などの付着物が断熱層のような働きをすることで、熱交換効率が低下します。
さらに、チューブ内部や流路に汚れが蓄積すると、流路が狭くなり、流量の低下や圧力損失の増加につながる場合もあります。熱交換器の性能が低下すると、冷却や加熱にこれまで以上の時間が必要になり、周辺設備の負荷やエネルギー消費量にも影響を与える可能性があります。
こうした場合でも、熱交換器そのものが劣化しているのではなく、汚れの付着が原因で性能が低下しているケースであれば、化学洗浄によって汚れを除去することで本来の性能を回復できる可能性があります。
化学洗浄と酸洗いの違い
化学洗浄と酸洗いは似た言葉として使われますが、厳密には対象範囲が異なります。
化学洗浄は、酸性薬剤、アルカリ性薬剤、溶剤、専用の洗浄剤などを使用して汚れを化学的に除去する方法の総称です。汚れの種類に応じて使用する薬品を変更し、スケールや錆、油脂など幅広い付着物を対象とします。
一方、酸洗いは化学洗浄の一種であり、酸性の薬剤を用いて金属表面の錆やスケール、酸化皮膜などを除去する方法です。
つまり、化学洗浄と酸洗いは別々の処理というより、化学洗浄という大きなカテゴリーの中に酸洗いが含まれると考えると分かりやすいでしょう。
熱交換器の洗浄では、単純に酸を使用すればよいわけではありません。材質や汚れの性質によって適切な薬剤は異なるため、それぞれの条件に合わせた選定が必要です。
化学洗浄と高圧洗浄の違い
高圧洗浄は、高圧の水流を汚れに当て、その力で付着物を剥離させる方法です。比較的やわらかいスラッジや泥状の堆積物、剥離しやすい汚れなどに有効です。
これに対して化学洗浄は、薬品によって汚れそのものを溶解したり、付着力を弱めたりすることで除去します。
特に、長期間固着したスケールや錆、薄い膜状になって強く付着している汚れについては、化学洗浄が適する場合があります。また、熱交換器内部のように複雑な形状をしており、高圧水を直接当てることが難しい場所にも対応しやすい点が特徴です。
一方で、化学洗浄と高圧洗浄のどちらか一方だけを使用しなければならないわけではありません。汚れの状態によっては、化学洗浄で付着物を反応・軟化させた後に高圧洗浄を行うなど、複数の方法を組み合わせることで洗浄効果を高めることもあります。
熱交換器の化学洗浄には循環・浸漬・スプレー洗浄がある
化学洗浄には、設備の状態や形状、設置状況に応じていくつかの施工方法があります。
代表的なのが循環洗浄です。循環洗浄は、熱交換器や配管内部に薬液を循環させ、内部の汚れを除去する方法です。設備を大きく分解する必要がなく、設置された状態の熱交換器を現地で洗浄できることが大きな特徴です。チューブ内部など、人の手が直接届かない場所にも薬液を送り込むことができます。
浸漬洗浄は、取り外した熱交換器やプレート、部品などを洗浄槽に入れ、薬液に浸漬して処理する方法です。対象物全体を薬液に触れさせることができるため、複雑な形状や細かな凹凸部分にも薬液を作用させやすくなります。
また、大型設備など洗浄槽への浸漬が難しい場合には、薬液を対象面に吹き付けるスプレー洗浄を行うこともあります。
設備のサイズや設置場所、分解の可否などによって適切な洗浄方法は異なるため、現物の状態を確認して施工方法を検討する必要があります。
化学洗浄では材質と汚れに合わせた薬品選定が重要
化学洗浄において最も重要なポイントの一つが、使用する薬品の選定です。
「強い薬品を使えば汚れがよく落ちる」と考えがちですが、薬品が強すぎると汚れだけでなく、熱交換器を構成する金属そのものを腐食させる可能性があります。
そのため、熱交換器の材質、汚れの種類や成分、付着量、設備の使用条件などを確認したうえで、適切な薬剤を選ぶ必要があります。
さらに、同じ薬剤でも濃度や温度、洗浄時間によって作用は変化します。強固な汚れに対しても、一度に強い条件で処理するのではなく、母材への影響を確認しながら洗浄を繰り返す方法が適する場合もあります。
光伸産業では、必要に応じてサンプルによるテスト洗浄を行い、汚れへの効果と母材への影響を確認したうえで、適切な薬剤や施工条件を検討することも可能です。
母材を傷めないためには施工条件の管理も重要
化学洗浄は、薬品を選定すれば終わりというものではありません。
洗浄効果と母材への影響のバランスを取りながら、薬品濃度、温度、処理時間などを管理することが重要です。
同じ材質の熱交換器であっても、使用年数や腐食状態、汚れの種類によって適切な条件は異なります。必要以上に長時間薬液に接触させたり、強い濃度で処理したりすると、母材への負担が大きくなる可能性があります。
そのため、洗浄中の状態を確認しながら条件を調整し、必要な汚れだけを除去していく施工管理が求められます。
化学洗浄では、単に「汚れが落ちたか」だけでなく、設備を継続して使用できる状態に保ちながら洗浄することが重要です。
洗浄後の薬品残留や腐食、廃液処理にも配慮が必要
化学洗浄では、洗浄工程だけでなく、その後の処理も重要になります。
洗浄後に薬剤が設備内部へ残留すると、腐食や設備トラブルの原因になる可能性があります。そのため、洗浄後には薬液を十分に排出し、必要に応じて水洗いや中和処理を行います。
また、洗浄後の伝熱面や内部状態を確認し、必要に応じて防錆処理などを行うことも重要です。
さらに、化学洗浄では使用済みの薬液や汚れを含んだ廃液が発生します。こうした廃液についても、関係法令や処理基準に沿って適切に処理しなければなりません。
設備をきれいにするだけではなく、洗浄後の安定稼働や周辺環境まで考慮した施工が求められます。
当社の熱交換器の洗浄・再生事例をご紹介
鉄製熱交換器 内部チューブ化学洗浄
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熱交換器の内部チューブを対象とした化学洗浄の事例です。長期使用によりチューブ内部に錆・スケール・スラッジが蓄積し、流路の閉塞や熱交換効率の低下が懸念されたため、分解洗浄のご依頼をいただきました。
まずチューブ束を本体から取り外し、内部の汚染状況を詳細に確認しました。鉄材に適した薬品を選定し、チューブ内への薬品浸透が確実に行われるよう、浸漬方向・時間・濃度を調整しながら処理を進めました。錆やスラッジが強固に固着している箇所については、繰り返し洗浄を行い、母材を傷めることなく汚染物を除去しています。
SUS316 多管式熱交換器 浸漬酸洗い

こちらはSUS316製多管式熱交換器の浸漬酸洗い事例です。管板部および外面全体に付着した酸化皮膜の除去が目的でした。
多管式熱交換器は多数の細管(チューブ)が密集した構造であり、チューブ間に薬品が行き渡りにくいという課題があります。今回は浸漬槽内で製品の向きを変えながら処理することで、細管の隙間にも薬品が十分に浸透するよう対応しました。
SUS熱交換器プレート 浸漬酸洗い

こちらはプレート式熱交換器のプレート部分を浸漬酸洗いした事例です。
プレートの汚れが放置されると熱交換器の熱交換率が悪くなります。浸漬酸洗いを施しプレート再利用することで新たな資源を使用することなく環境に考慮した処理となっています。
熱交換器の化学洗浄なら光伸産業へ
光伸産業では、熱交換器の状態や汚れの種類、材質などを確認し、適切な薬品と施工方法を選定した化学洗浄に対応しています。
循環洗浄、浸漬洗浄、スプレー洗浄など、設備の形状や設置状況に合わせた施工が可能です。また、必要に応じて事前のテスト洗浄を行い、母材への影響を確認しながら洗浄条件を検討します。
さらに、化学洗浄だけでなく、設備の取り外しや配管の切り離し、回収、洗浄後の据え付けまで一貫してご相談いただけます。
設備工事については、プラント補修工事を手がけるグループ企業・株式会社リライズと連携し、撤去から洗浄、再設置まで一気通貫で対応します。設備を取り外すことが難しい場合には、現地での循環洗浄なども検討可能です。全国への出張洗浄にも対応しています。
熱交換器の効率が以前より低下している、内部のスケールや錆を除去したい、高圧洗浄だけでは汚れが落ちない、設備の撤去から洗浄までまとめて依頼したいといったお悩みがございましたら、熱交換器の化学洗浄についてお気軽に光伸産業までご相談ください。






